第2回ではクラウド販売管理システム「flam」の特徴や構造について、そしてフリップロジックのカルチャーについて、井川氏にお話を伺った。
ベンダーインタビュー2022年6月号/株式会社フリップロジック井川氏 #1
売上・仕入・在庫の管理をクラウドで一元管理できるシステム。利便性の高いクラウドサービスで提供することを実現
——では、flamとは一体どのようなサービスかを教えてください。
平たく言えば、売上・仕入・在庫の管理をクラウドで一元管理できるシステムです。
販売管理に必要な基本的な機能は全て網羅しています。
販売管理は企業における基幹業務の一つになりますが、それを支えるシステムなので、flamは相当システムの安定性や可用性が求められているという前提があります。
且つ、これらを利便性の高いクラウドサービスとして提供することを同時に実現したのがflamになります。
※flam公式ホームページより
お客様がflamをご利用される際、おそらくその安定性、可用性は直接感じる事はないとおもいますし、flamがどの様に構築されているかについてもご存知では無いと思います。その部分について少し触れさせて頂くと、flamはクラウドネイティブで設計されたサービスになります。「クラウドネイティブ」とは、「クラウドの利点を徹底的に活用できるよう設計・構築されたシステム」という意味合いの言葉です。
flamは、従来のオンプレシステムをそのままクラウドに移行した様なものではなく、最初からクラウドで稼働することを前提に、クラウドの特性を最大限生かせるような、設計されたシステムだとお考え下さい。
例えば、サーバー環境を見ると、flamはアマゾンのAWS上で稼働をしています。
AWSでは、クラウドサービスとして推奨している設計ルールにWell-Architected フレームワークというものがあるのですが、我々がflamの設計当初に最も重要視したことは、Well-Architected フレームワークに準拠し設計することでした。
平たくいえば、クラウドのサービスを設計する上で「こういう点に注意して設計しなさい」という設計ルールが、AWSによって提唱されていて、これに従うことによって高いセキュリティレベルや信頼性、高いパフォーマンスや利用持続の可用性等をユーザーが享受できる。というものになります。
撮影場所: 株式会社フリップロジック本社/写真撮影: Hisabori Shunsuke
クラウドネイティブな設計により、サーバーの多重化が正しく機能するシステム
flamでは、全てのサーバーが多重化されています。ユーザーが触るシステムの機能部分はアプリケーションサーバーと、そのアプリケーションサーバーと接続されるデータベースサーバーで構成されていますが、それら各サーバーはそれぞれ多重化されています。
例えば、アプリケーションサーバーやデータベースサーバーも、結局のところサーバー機器とOSで構築され稼働しています。これらサーバー機器やOSは、例外なく何らかの障害・故障が発生します。もし、事務所内に設置された1台のサーバーであったとすれば、障害が発生すると、そのシステム自体が止まってしまいます。
対して、flamをはじめとするクラウドネイティブなサービスの場合は、サーバーで何らかの障害が発生した場合、その障害を自動感知し、トラブルが発生したサーバーを切り離して、それに代わる健全なサーバーが起動し自動的に稼働を再開するという事が常に行われます。その間、利用中のユーザーは「あるサーバー」に障害が発生した事に気がつかず利用を継続している状況となります。
flamでは、データベースサーバーもアプリケーションサーバーもそのような仕組みになっています。サービスの可用性を担保するための仕掛けは既に組み込まれている。とお考え下さい。
さらに、クラウドサービスを含むインターネット上のサービスでは、お客様の接続数が状況によって大きく増減しますよね。flamは販売管理システムですので、月末月初の請求時や締めの時期にはアクセスが集中します。その様な状況下では、flamはサーバーへのアクセスの負荷を感知し、サーバー自体が自動的にどんどん増殖する仕組みとなっています。サーバーが自動的に増殖する事で各サーバーの負荷を分散し、サービス自体がダウンしないようにしています。
クラウドネイティブで設計され、可用性を担保することで、現在SLAは99.95%と、高い稼働率を維持しています。
実は、flamは2009年にリリースしたので、今年で14年目に入るのですが、計画外のシステムダウンは過去13年間一度もありません。今後もそれらの高い可用性を維持することには最大限尽力します。DXのテーマの中の一つにもあります、BCPの対策としてもこの可用性はとても重要な課題であると我々は考えています。
同時並行で処理を行っても維持される高速レスポンス
撮影場所: 株式会社フリップロジック本社/写真撮影: Hisabori Shunsuke
もう一つ特徴を挙げるとすれば、高速レスポンスです。
実際にflamに触ってみないとなかなか体感しづらい部分かもしれませんね。例えば、flamを利用されているお客様の事例になりますが、少し規模の大きい企業様で、その会社では仕入れ担当者様が70名ほどいらっしゃいます。商品点数は4万点を超える中、並行処理で発注処理と入荷処理を絶えず行っている状態で運用されています。こういう状態下でもflamはとてもスムーズに稼動しています。それだけの処理量を考えると、少しでもレスポンスが悪いとすぐに直接業務に負担をかけることになります。
例えば、商品の検索時、検索結果の表示までのレスポンスは操作される方、特に現場のヘビーユーザーには直接影響します。レスポンスの悪さはストレス以外の何物でもなく、致命的です。
我々はとにかく高速レスポンスで動くシステムを提供するように心がけています。
ぜひ実際に体感いただきたいと思っております。
いつでもどこでも誰でも簡単にほしい情報へアクセス
3つ目の特徴としては、操作性でしょうか。flamでは各操作画面や操作手順にとてもこだわって設計されています。クラウドコンピューティングは、「いつでもどこでも誰もが簡単に自分が欲しい情報にアクセスできる」という概念ですが、flamはとにかく簡単に自分の欲しい情報にアクセスできるような仕組みを目指しています。実際に伝票処理をされる現場担当の方はもちろんですが、ごくたまにしか触れることのない管理者や経営者が今月の売上を見たい時、詳しい操作が分かっていなくても、欲しい情報にすぐにたどり着けるような分かりやすいレイアウトにしています。
分かりやすい操作は、社内の教育コスト削減にもつながります。例えば、新入社員に対するflamの操作教育の場面でも、短時間でレクチャーできるようなことも可能です。
システムに慣れ親しむまでの時間短縮であったり、誰もが簡単に使えるようにする事でストレスのない運営を可能とするシステムである事を目指しています。
それを表しているのがflamの操作画面だというふうにご理解頂きたいです。
毎日少しずつの変化により、ストレスなく進化するサービス
——確かにflamは非常にわかりやすい上に、システムの動作性で遅いと感じたことはないですね。導入支援をさせていただいた企業様への定着も比較的スムーズでした。
ありがとうございます。
最後に少しつけ加えておきたいのが、flamは進化するサービスだという点です。flamがリリースされてからすでに14年目になりますが、リリース当時にご契約いただいたお客様で現在も継続してご利用頂いているユーザーも多くいらっしゃいます。14年前のflamは画面のキャプチャーでしか残っていませんが、機能はまだまだスカスカでした(笑)。
※現在のflamメインメニュー画面キャプチャー
当時、売上や請求、仕入の基本機能はありましたが、今のflamに比べると機能面では非常に乏しいものでした。
以前、flamリリース直後からご利用頂いているお客様とお話する機会があり、最初はちょっと物足りないと感じておられたようなのですが、今では売上、仕入、在庫の管理に加え、売上や仕入の集計機能他、会計システムとの連携もできるようになったことでとても便利になった。とお褒めの言葉を頂きました。
本当に、初期のflamとは全く様変わりをしていると。ただ、相当様変わりしたものの、毎日毎日少しずつ変わっていくので、全くストレスはなかった。ともおっしゃって頂けました。
これらサービスの提供のしかたはGoogleの手法を参考とさせて頂いております。Googleのサービスも最初はGmailとスプレッドシート+αでしたが、様々なアプリケーションがどんどん追加されていっていますよね。Googleではある特定の機能単体ではなく、Googleのビジネスツールとして提供し、それを契約するイメージですが、あとからどんどん機能が追加されるので、それに応じて活用の幅も拡がり、利便性も高まります。
我々もその思想に非常に共感しています。
flamにおいても、どんどん機能を追加し、どんどん高速化し、どんどん他のシステムと連携できるよう育てていきますので、是非どんどん使って頂ければ(笑)
効率化への妥協は一切しない。より良い方法があれば即切り替えをするカルチャー
撮影場所: 株式会社フリップロジック本社/写真撮影: Hisabori Shunsuke
——flamや株式会社フリップロジックのここがすごいを教えてください。
株式会社フリップロジックの基本的な概念というか、考え方なんですけどね。
我々は常に変化しています。flamも組織も。
変化を止めない。というところが株式会社フリップロジックの強みだと思います。
既成概念にとらわれません。
今まで正しいと信じてやってたことでも、さらに良い方法があるとわかれば、即切り替えようとします。効率化するためには一切妥協をしません。
そういう思想が株式会社フリップロジックには根付いています。それは私がそういう考えだからということではなく、我々の組織、社員全員がそう考えています。
もうカルチャー化していますね。
カルチャーの波の発生源はCOO。自ら積極的な改革を推進
——そういったカルチャーはどのようにできたものなのでしょうか?
その波の発生源は、COOの石原です。
石原はとにかくロスや無駄が嫌、遊ぶときには徹底的に遊びたいし、仕事するときには徹底的に仕事をしたいという考えのメンバーです。石原の場合、外部から「まだそんなことやってるの?」と指摘されることが嫌なので、自分から積極的に改革に取り組み、自分自身を改革しています。そして、それを僕たちに強いるわけですよ。
——強いるんですか?(笑)
そうです(笑)
僕たちにも強いるので最初はちょっと抵抗があったかもしれません。後で出てくるDX推進の話にも繋がると思いますが、何かを変革しようとする際には、必ず抵抗勢力があります。その抵抗勢力はほとんどの場合古い考え方だと思います。
ある意味、僕がその抵抗勢力だった(笑)
石原は考え方がすごく柔軟です。新しい技術や新しい取り組み、新しい効率化に対して非常に敏感なんですね。それが徐々に社内に浸透していき、今は全員がそのマインドで動いています。そうなり始めたのは、ここ10年ぐらいだと思います。flamができてしばらくは今までのやり方から変えられない空気もありましたが、今ではそれが当たり前になりましたね。
改革推進のモチベーションは短期間でのリターン。より良い改善案が社内からも出るようになった
その改革を推進するためのモチベーションがどこにあるかというと、それをやった先に短時間でリターンがあるんですよ。
正直なところ、仕事はある意味、給料や生活のためにしているものです。だから、生活の糧となる給料を短時間で稼ぐことができることが望ましいですね。そのためには、収入を維持し仕事量を減らすことが必要です。そういうマインドが全員に浸透していったら効率化を推進することへの抵抗はなくなっていきます。
また、多くの場合、時短を目的とした効率化だけに取り組むと、サービスの質を落とすことになりがちです。我々はサービスの質を落とさずに効率化をするために、どうすればいいのか、自動化するような手立てはないのか?と考えるわけです。
例えば、問い合わせも様々ですが、同様の質問についてはいかにテンプレート化するか等ですね。それらをナレッジ化する事で、お客様からの質問に対して0から回答を考えていたから1時間かかっていたものが、30分程度に圧縮され、15分になり5分になり…と、どんどんスピードアップする訳です。
それらを充実させると、仕事が効率化し残業が減り、定時に帰って、さらにその仕組み化によってお客様も喜んでくれ、契約が増えてくる。
当然、それが給料に跳ね返ってくる。
その様なサイクルが回り始めると、そこからは「もっとより良いサービスを提供しなければ!」と思うようになってきますよね。逆に、無駄なことが増えると時間効率も悪くなり、サービスの質まで下げてしまいます。だからもっと効率化できないのか?自動化できないのか?って、今度は社内から案があがってきます。そういうマインドが出来上がってきた。という感じですね。
マンパワーに依存しない少数精鋭の体制
——少数精鋭だと、スキルのとにかく高い一部の人間が大きな成果を上げているような印象が多いですが、株式会社フリップロジックさんは個人のスキルに依存しない体制ということですね。
まだまだ十分ではありませんが、その様な体制を目指しています。
牽引する人のパワーだけに頼ると、その人がいなくなると、崩壊することがほとんどです。仕組み化することと平準化することを大切にしています。いわゆるルールを整備し、この手順通りにやればトラブルはないというところをある程度決めているということですね。
だから、そのための議論は立場を度外視して全員全力でやっています。その想いは良くしていくために必要なこと。という共通認識ができているので成立しているのだと思います。
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